コラム

バーチャルプロダクションとは

2024.10.18

映像制作・スタジオ運営

バーチャルプロダクションとは

 

バーチャルプロダクション(Virtual Production)とは、映像制作における革新的な技術であり、リアルタイムでの3DCG背景と実写の融合を可能にする手法です。
この技術は、セットの背景にLEDディスプレイを用いて映像や3DCGを投影し、被写体と合わせて撮影します。

従来の技術との違いとして、ポストプロダクションの合成作業を大幅に削減し、撮影現場での即時的なビジュアルフィードバックを提供することで、映像制作の効率化とクリエイティブな自由度を高めています。

用途として、映画やテレビドラマ、CM、ミュージックビデオなど、多岐にわたる映像コンテンツの制作に利用されています。

 

バーチャルプロダクションの特徴

 

この技術の最大の特徴は、撮影現場でのリアルタイムのビジュアルエフェクトの実現です。

従来のグリーンスクリーンやブルースクリーンを使用した合成技術とは異なり、バーチャルプロダクションでは、LEDスクリーンに投影された3DCG背景と実際のセットや俳優を同時に撮影することで、よりリアルな光の反射や影などの照明効果を得ることができます。
これにより、リアリティのある描写が可能で、ポストプロダクションの作業が大幅に削減され、制作プロセスが効率化されます。

また、撮影が困難な場所や特定の時間帯での撮影を容易に再現できること、撮影コストの削減、そして撮影後の編集作業の効率化などが挙げられます。3DCG技術との組み合わせにより、デザイン性の高い背景を創出し、映像のクオリティを向上させることもできます。

 

バーチャルプロダクションに応用される技術

 

「LEDディスプレイベースのシステム」

大型のLEDスクリーンを使用し、3DCGで作成されたバーチャル背景をリアルタイムで投影します。
側面や天井にLEDを配置することにより、撮影中に現実のセットとバーチャル背景が自然に融合し、リアルな光の反射や影の照明効果を得ることができます。

「カメラトラッキングシステムとインカメラVFX」

カメラの位置と動きをリアルタイムで追跡し、そのデータをバーチャル空間上に同期させます。
これにより、カメラが動いてもバーチャル背景が正確に追従し、現実の世界におけるカメラの画角が3DCG上でリアルに再現されます。このような技術をインカメラVFXと呼びます。

「リアルタイムレンダリングエンジン」

Unreal EngineやUnityなどのゲームエンジンを応用したレンダリングエンジンが、3DCG背景をリアルタイムで生成し、LEDスクリーンに投影します。
これにより、撮影現場で即座にビジュアルエフェクトを確認し、調整することが可能になります。

「モーションキャプチャ」

 俳優や物体の動きをセンサーで捉え、そのデータをバーチャルキャラクターやオブジェクトに反映させる技術です。
これにより、よりリアルなアニメーションやインタラクティブな映像を制作することができます。このような技術もバーチャルプロダクションの撮影に応用することが可能です。

 

テルミックの独自技術

 

モーションキャプチャーメカトロニクスという独自の取り組みについてご紹介します。こちらはバーチャルプロダクションでの運用に最適化された機構装置です。

回転するターンテーブル機構と前後に動くベルトコンベア機構を組み合わせたオリジナルの装置です。
エンコーダーで取得した機構の動作データをUnrealEngine内の3DCGにリアルタイムに反映させることができます。

また、インカメラVFXとの併用も可能です。このような装置を用いることで、コンパクトなスタジオでも様々なカットを撮影することができます。

このように、我々は、日々、自分たちが持つノウハウやアイデアとバーチャルプロダクションの技術を掛け合わせることで新しい可能性を探っています。

 

テルスタでの撮影事例

TELMIC Studio Soka(テルスタ)では様々な撮影が行われています。その一部をご紹介します。

 

大成建設、2030年の働き方DX動画「the way we work.」(コーポレートCM)

 

新生!熱血ブラバン少女SPOT (舞台告知CM)

 

ZELEクリエイティブチーム「QQ」2024ビジュアル(スチール撮影)

 

撮影用3Dアセット

アセットとは、3DCGを使用して作成されたバーチャル空間上のセットのようなものです。TELMIC Studio Sokaではすぐに撮影可能なアセットが常時15種類ほど用意されています。
CGを作成することなく、バーチャルプロダクションやインカメラVFXのような最新技術をすぐに導入することができます。

 

Cyberpunk C

 

The World of Escher

 

Living room

 

バーチャルプロダクションの歴史

バーチャルプロダクションの歴史は、2000年代初頭に遡りますが、その技術が大きく注目されるようになったのは、2010年代に入ってからです。

特に、2019年に配信されたディズニー+のドラマシリーズ『マンダロリアン』の制作で使用されたILMのStageCraftシステムが広く普及のきっかけとなりました。
バーチャルプロダクションの導入により、セットのオブジェクトを照らすLEDボリュームからの明かりは現実的に作用する照明効果を作り出し、ディストーションや被写界深度による効果、ボケ、レンズフレアといったわずかな自然現象の備わった景観をカメラで直接捉えることが可能になりました。

日本においても、バーチャルプロダクションは2020年代からNHKの大河ドラマやテレビ朝日系列のスーパー戦隊シリーズをはじめとするテレビドラマやMVで用いられています。日本国内でも、バーチャルプロダクション設備を常設したスタジオが次々と作られています。

 

バーチャルプロダクションの今後

 

今後の展望としては、バーチャルプロダクションは映像制作業界における標準的な手法となりつつあり、さらなる技術革新が期待されています。リアルタイムでのビジュアルエフェクトの進化により、映像表現の幅が広がり、視聴者に新たな体験を提供することができるでしょう。

バーチャルプロダクションは、映像制作の未来を形作る重要な技術であり、その進化はまだまだ続くことでしょう。
映像クリエイターたちは、この技術を駆使して、私たちがこれまでに見たことのないような驚異的な映像世界を創り出していくことになるでしょう。

この技術は、映像制作のパラダイムシフトをもたらしており、「テレビが白黒からカラーに進化した」というほどのインパクトを映像の世界にもたらすと言われています。

バーチャルプロダクションの登場は映像制作にとって、テレビの大転換点に匹敵する重要な進化であると考えられています。

 

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